卒論参考文献フェミニズム編
卒論に使った参考文献を見てくれ。面白かったんだ。
そして読んでくれ。という気持ちでいっぱいなんだ.......!!!
卒論では妊娠中絶を扱い、リプロダクティブ・ライツにつながるような議論をしました。「胎児の可視化」「胎児の人間化」という視点から法律論を検討しました。
人工妊娠中絶や「胎児の人間化」に関心がある人はあたってみてください。
まずはこの本。「胎児の人間化」「可視化」とはなんぞや?それがどう妊娠中絶の議論と関わるんだ??という人はこれを読んで欲しい。
ちなみに私はめちゃくちゃ引用した。いま私のパソコンは「塚原注」というのが秒で変換予測で出てくる。
そして、荻野美穂本にもめちゃお世話になった!
今回は日本における中絶の議論を取り扱ったので、この本が役に立ちました。
さらに言うと後ろの参考文献リストが詳細でほんとサイコーです....。
なお、Roe v. Wadeのようなアメリカの議論を法的に追いかける前にアメリカ社会や流れを概観するのにとてもよかったのがこちら。
歴史系だとこれも。
「胎児の可視化」「胎児の人間化」をキーワードに、公的議論の中でいかに中絶の言説が構築されていったのかを検証したのが、「母性愛という制度」
私は今回70年代初頭の優生保護法改悪阻止運動における女性運動(ウーマン・リブ)の言説に着目したので、70年代の言説をまずは大づかみにする上でも学びが多かった。
なお、ここで分析しているような言説を検証するのに朝日新聞の「ゆれる優生保護法」っていう特集を読みました。
剣持加津夫「99/100消えゆく胎児との対話」は批判的に読みました。「中絶=殺人」という言説が見られます。
印象的だったのは、手術を受ける女性を艶めかしく形容している箇所があって、な.....なるほど......このまなざしが物語っているものがあるよな...と。思いました。このパンフレットは国立国会図書館でしか見られないはず。(結構読んでてしんどいのと批判的に読むようなものだと思います)
70年代前半のウーマン・リブがどんな主張をしていたのか知るのにはこちら。
図鑑のように大きな本で、中には当時のビラがびっしり収録されています。忘れかけていたラディカルさを思い出させてくれる熱い文章や、30年以上経つのに共感してしまう切実な声、歴史を感じる新左翼っぽい言葉使い。
私的にはなにかとエンパワーしてくれるパワースポット的な本。わたしたちの(と言っていいのかな)運動はどこから来たのか知る上でもいいかも。
リブはどう位置づけられたのか、られるのか。
ビラも織り交ぜつつ、手ごろで読みやすいサイズなのがこっち。
ちな、妊娠中絶は母性にも関わるのでこっちも読みました。
直接引用しなかったけど、リブでいうとこの本も好き。
「胎児の人間化」といえばこれ。
胚が「生命」として構築され神聖で道徳を有する主体として描出されていく過程を検証しています。目からウロコというか....塚原久美「中絶技術とジェンダー」で言っているように、自分が読んできた理科の教科書とかもまさしく女性を「胎児」の「入れ物」にして背景へと押しやっていたわけなので、この本を読んで自分の見方を問い直しました。
あーーーー一般教養で聞いた話の中になんかこう...近代医学との関係で女性が客体化されていく過程をなんかおもしろそうに先生が話してたはずなんだけど......えーーーっと.....でひねり出したのがこの本。
の、前にこれなんだと思います?
気になる人っていうかこれに隠された歴史と謎を知りたい人は全力で↓を読んでください。
妊娠経験をインタビューから浮彫にする本。
法的議論が女性の経験と乖離しているのではないか?というところから出発したので、こうした資料はとても参考になりました。
なかでも「お腹のなかのものを生命と認識したのはいつですか?」という質問項目があり、興味深い数字でした。
後半はインタビューが読み物的にまとめられていてそれぞれの人生の中の「妊娠」を語っています。
「産まれんことには『赤ちゃん』っていわん」という感覚をインタビューから日本においてもある時期までは存在したことを明らかにした柘植先生の論文が入っているこの本も面白かった。
中絶の経験をインタビューしながら、既存の発達心理学は男性中心主義であったのではないか?と告発し、その後法学を含む様々な学問分野に影響を与えたキャロル・ギリガンの「もうひとつの声」。
なおキャサリン・マッキノンがこの本のことを批判しているので、feminism unmodified邦訳「フェミニズムと表現の自由」の中の一論文と合わせて読むと面白いです。
脈絡なく紹介してるのですが....。
めちゃくちゃ大事な本をここまで忘れていた.....!!!
「生殖技術とジェンダー」に収録されている井上達夫氏と加藤秀一氏の論争は、当時もいろんな反響もあったようですし、また後に引用されているのでぜひ一読を。
私がこの論争でおもしろいなと思うのは、二人がかみ合っていないこと。
私はかみ合っていないと思います。井上氏が「胎児が生命であることを前提としたアプローチ」であるのに対し、加藤氏はそうではない。「胎児が女性にとって両義的存在であることをポジティブに認め」「その道徳的存在者性の承認」において女性が特権的地位にあるという。
この記事の前半で「胎児が生命として構築され~」みたいなこと言って、「ん?胎児は生命なのでは???」という感覚にたぶん私もちょっと前にはなっていたのではないかな...。そのくらいその直観は強固だということを、井上氏が証明してしまっているのではないか...という噛み合わなさ。ただそれぞれ読み応えあるので、ぜひご一読を。
この論争を検証しているのが『産む産まないは女の権利か?』です。
あああああああ~~~リベラルな議論で「なんか違うな....あ...いや、そう、女性の権利....そうなんだけど......」みたいなやつの理由がわかったぁぁぁああああああ~~~~~~~~~~(絶叫)ってなります。
リプロダクティブ・ライツにつながるような議論をしましたが、国際法上のリプロダクティブ・ライツ概念についてまとまっているのはこの本。
国際法とかの流れをがーーーっと知るのに使えます。
直接引用はしなかったけど、生命倫理はこんな風に議論をしてきたのね、ふむふむと読めるのが以下。
特にジュディス・トムソンの議論は有名で批判的にも好意的にもよく引用されるのでここで読んでおくと他の本を読みやすくなります。
ドウォーキンの「挫折」の議論もそこそこ面白かった。法律界隈の人は、彼の法概念論について学びながら妊娠中絶について考えつつ、アメリカのオリジナリズムとの対抗という文脈も読めて面白いので法学の人はぜひ。
これも結局卒論には使えなかったんだけど、面白いから読んでほしいので。
以上が、卒論参考文献の一部でした。
あとは本じゃなくてこまごました論文を読んだり、雑誌記事だったり....。メインは法律論なのでこんなもんです。
ベスト3を選ぶなら、塚原久美「中絶技術とリプロダクティブ・ライツ」、江原由美子編「生殖技術とジェンダー」、柘植あづみ他編「妊娠―あなたの妊娠と出生前検査の結果を教えてください」です。
なんらかの読書案内になれば幸いです。