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大学院生のメモ置き場。ふぇみ的な書き散らしなど。

春だし就職/昇任するあなたに贈る『部長、その恋愛はセクハラです!』

 

私が買ったやつには「上野千鶴子氏推薦!」とデカデカと書かれている。

その推薦文には「一家に一冊、いや、男性一人に一冊、本書は『家庭の医学』並みの必需品。あのひとが昇進したら、贈ってあげよう。」と書かれている。

上野千鶴子氏という権威が言うからなんでもいいって話にはならないのですが、この帯は確かに!私もそう思う!って感じでした。

 

で、すごい勢いで読んだんですが(自宅から東京駅、東京駅から新大阪まで新幹線の片道の間に読み終わりました。新書なので読みやすいです。3時間あれば確実に読み終わるはず)まじでこれは、とくに男性が昇進したときに贈るといいプレゼントになるのでは...?おせっかいっぽいけど訴訟になるよりいいでしょう。というか被害者が減るし。

 

あとは、自分の活動に引き付けていうと、こんなわかりやすく「ハラスメントとはなんたるか」を理解できる本があったのか!もっと早く出会いたかった!と思ったので、ハラスメントや性に基づく暴力について勉強したい人の入門としてめっちゃオススメします!!

 

 

と、いうことで牟田和恵氏『部長、その恋愛はセクハラです!』

 

部長、その恋愛はセクハラです! (集英社新書)

部長、その恋愛はセクハラです! (集英社新書)

 

 

 

あの、セクハラに関してよく言われるやつで「女が嫌だったらなんでもセクハラなのかーー!」みたいなのありますよね。(割とイメージで言ってる)

私は嵐ファンなので、翔くんが主演した「特上カバチ!」という法律系のドラマで、行政書士を主人公にしたドラマでセクハラを題材にした回があったんですよ。その時に女性側に立つ堀北真希が「セクハラは本人が嫌だと言ったらセクハラです!」みたいなことを言って、被害女性のことを考えず示談に持ち込もうという翔くんを批判するくだりがあったことを結構強烈に覚えてる。

 

それに関しては「嫌だと思ってなくても、嫌がっていなくてもセクハラです!」という解答が正解なんじゃないか...と。

 

第四章が「女性はなぜはっきりとノーと言わないのか、男性はなぜ女性のノーに気づかないのか」というタイトルで「本章のレッスン 男性が気づけない理由その4 女性は嫌でもニッコリするもの」というまとめが目次に乗っていてそれドンピシャなんすよ!

 

雇用関係や師弟関係で権力関係がある中では、その後の悪影響を考慮してニッコリしてうまいこと収めようとするものだったり...性的なメッセージを受け取りたくなかったり。

そもそも女性には、ジェンダー規範が染みついているからはっきりと「ノー」という習慣がなかったり、逆に男性は多少ぐいぐい行くことが奨励されていたり...とはっきりと「ノー」が出ないメカニズムがわかりやすく紹介。

 

 

 

「性的同意」というのがここ二年くらいの私の取り組んでいる課題ですが、「同意」を全面に出して活動することに問題を感じることもあって...。いや、もちろん「性的同意」という言葉自体は対等性や非強制性といった形でその時の文脈や権力関係に目を配り、対等な関係性でなければ同意は発生しない、ということをワークショップとかでは強調しているけど、「性的同意」という言葉そのものからは背景にある権力関係の考慮は見えてこない。

むしろ強調されるべきは、権力関係をめぐるあれこれなのでは....というような気がしてきた。いやはや「性的同意」そのものの重要性は変わらないのだけど、展開の仕方としてね...。運動の展開の仕方、強調の仕方は常に悩ましいところです。

単に「同意の有無」という話だと勘違いされてしまうと、「ノーって言わなかった女が!」とも取られかねない訳で。常に女性(バイナリーな典型的な男→女への加害を選定とした言い方ですが)が性行為に同意しているということをデフォにするのではなく、むしろ逆でOkな時だけOK。そして行動を起こす側に常に同意をとる責任があり、沈黙が何かを意味するのではなく積極的な同意が同意である。

まずは環境として同意できる環境なのか、職場の場合はここでもう既に権力関係があるからアウト!ですよね。あとは強制力がなんらかの形で働いていないか。

そして次に積極的同意の話と、非継続性(キスに同意したことは性行為に同意したことにならない)を重ねていく。

 

話が同意の方にながれちゃったけど、要は権力関係がキーワードということ!

よく言われるのは権力ってなんやねん!という話で、雇用関係とか師弟関係とかはわかりやすいですが、他にも専門権力と言った形で一方が専門的知識を有しているとか、、権力はどういうときに発生しているのかというところも載ってて、わかりやすい~~っていう。

 

 

あと、本に戻ると、そういう、不均衡な権力関係の中では、同意は不可能であるという文脈における「ノー」と言えないという権力性はもちろん、年上の男性は専門的な知識や職業的なスキルで「かっこよく」見えるものだ、というのもなるほど~~~!すぎて、笑

 

 

他にも「ほとんどのセクハラはグレーゾーン」というのも、ごもっとも。

 早い段階で謝罪しておけばいいのに、「やってない!」の一点張りで訴訟にまで持ち込まれ....という話。

 

あとは「女性はあなたのために露出の多い恰好をしているわけではない」とか。

 

1ページも無駄なくセクシュアル・ハラスメントがなんたるか、そして鈍感がビルトインされている上に世の中で権力を持つ立場になることが多い男性が陥りやすいハラスメントを加速させるポイントを押さえた良書です。

 

 

この本で「ハラスメントとはなんたるか」を把握しておくと実際に被害者になったときにも「私の思い違いかもしれない..」とかでじっと耐える期間を短縮できるのでは?と個人的には思いました。

同時に、権力を持てばハラスメント加害者になりうるわけなので、女性もハラスメント加害者にならないとは限らない。もちろん権力の性質は多少変わりうるけど。

その意味で、誰もが読んでおくといい本!新書で読みやすいし!

 

春から就職/昇任する人は読むといいと思うよ~ってこないだのゼミ合宿で就職する男子の同期に二回も勧めてしまった....笑

暇なら読もう~~